包み隠さず精神科

現役精神科医が精神医療の内情を、包み隠さず話します

引きこもり相談

保健所相談という仕事がある。

病院には行くほどでもない、行きたくない。だけど誰かに相談したい。そういう病気と正常のはざま、グレーな人々が集う場だ。

 

そこで受ける相談で多いのが、引きこもり問題。

多い。多すぎる。3件相談が入って3件とも引きこもり相談、なんていうのも時々にある。

 

引きこもりに至る理由は様々で、間違いなく病院受診が必要なケースも時に隠れている。

たとえば「外に出ると組織に狙われてるから出られないんです」なんてコテコテの統合失調症

「自分が臭いから出られません」なんていう自己臭妄想など、ガッツリ精神症状があって出られない人々。

人混みに行くとパニックになる、なんて広場恐怖症も潜んでいたりします。

 

 

ただ、やっぱり多いのは発達障害

もともと人付き合いが苦手で、なにかのライフイベントで躓いて引きこもり始めてしまうというパターン。

そんな人々が引きこもって数年、「最近では暴力も振るうんですどうしたらいいですか」とよく相談に来られる。

 

「引きずり出したらええんちゃう?」という言葉を胸にしまい、一緒に方針を考える。引きこもる原因はなんだろうか、どうすれば暴力が減るだろうか。ケース毎に対策を考えるのです。

 

 

ただ、これだけは言わせてほしい。

 

3食昼寝つき、おやつも小遣いも思いのまま。

 

その環境、誰でも引きこもるよね?

もともと発達障害があって人と合うのが苦手で、誰にも会わずに好きに暮らせる世界を見つけたら、僕なら引きこもるなぁ。

 

こんなことを言うと、小遣いなんて与えてない!なんて言って、一生懸命かばうんです、ひきこもりと自分を。

 

依存症の世界でイネイブラーという言葉があります。日本語で「できるようにする人」。

アルコール依存症の夫に、毎日せっせとお酒を運ぶ奥さんのことです。だって買わないと怒るから、なんて言いながら。アルコール依存症でいれるように手伝う人。

 

引きこもりにも、イネイブラーがいます。毎日せっせと過ごしやすいようにご飯を運んで、ネット代も払ってあげて。寒ければヒーターを、暑ければエアコンをつけてあげて、快適に過ごしやすくしているイネイブラーが。

 

家から出てほしければ、家を居心地悪くしましょう。砂漠のど真ん中でパソコン遊びはしないでしょう。大抵は水を求めて彷徨います。

砂漠のど真ん中でなお、微動だにしない真の引きこもりに関しては、なにか別の病気が隠れているから治療がいるでしょう。

ただ往々にして相談に来る引きこもりは、オアシスで快適に過ごす王子たちばかりです。

 

 

外が辛いから引きこもる。中がもっと辛かったら、引きこもる?

 

 

ただ人を突然崖から突き落とすのはよくありません。最近の大人は繊細ですから。少しずつ、ジワジワと不快度を上げていき、中に居づらくしていくのです。一方で外の快適さを伝えていき、誘導するのが良いでしょう。

 

 

こんなアドバイスを、日々し続ける保健所相談でした。