包み隠さず精神科

現役精神科医が精神医療の内情を、包み隠さず話します

家族内の精神バランス

家庭内の誰かが不調となったとき、周りの家族はその人の役割をフォローして、家庭機能を維持していく。父親がうつになれば、母親がパートを増やして頑張ってみたり。母親が不調になれば、子供たちが家事の手伝いを増やしたりといった具合だ。これは健全な家庭内のバランスのとり方と言える。

しかし家庭内で2人、3人と不調な人が出てくると、話は変わってくる。周囲がフォローしきれなくなるのだ。その結果家庭のレベルが1段階、2段階と落ちた状態でしばらく回ることになる。たとえば金銭面だったり、余暇の過ごし方だったり、清潔面だったり、レベルが落ちる内容は多岐にわたる。始まりは一人の不調だけで、その人のフォローが長引いた結果他の家族も負担に耐え切れず調子を崩す、いわゆる二次被害というルートもある。ともかく、このようにして本来の家庭機能から数段落ちた状態で維持された家庭には、変わった変化が起こることがある。

その数段機能が落ちた状態を、維持しようとするのだ。
たとえば母子家庭で母娘ともに不調だったとしよう。しかし治療の甲斐あってか母親が回復してくると、決まって娘は余計に調子を崩す。結局家庭内のバランスは保たれて、レベルが改善することは無い。この間に不調の娘のフォローに母親が回ることで、釣られて母親も再び不調となり、元の二人に戻ってしまう。
焦りだったり、嫉妬だったり、回復してきた人につい乗っかってしまったり、理由は色々あるのだろう。しかしこういった低い状態で家庭内のバランスをとる状態になってしまうと、治療が難渋することが多い。
基本的にこの状態を打開するには入院や実家へ避難させるなどして、一旦不調な人を家族から離すのがベストだ。全員でなくてもよく、不調な人一人を離すだけでも家庭内全体が改善してくることが多い。どうしても事情があって離す事が難しい場合は頭を悩ませるのだが、各々に自分を最優先するよう伝えていくのが良いのではないかと思う。ともかく各々の治療を優先し、余裕が出た人から順に家から離れる時間を増やしていくデイケアや作業所などの利用が望ましいだろう。もう一方はバランスをとるために一時不調になるが、元気なほうが家にいる時間が短ければ、影響は最小限にとどめることが出来るからだ。

家庭内の精神バランスが低めで安定している時は、一旦崩すところから始めるのが良いと思う。