包み隠さず精神科

現役精神科医が精神医療の内情を、包み隠さず話します

医者は金稼ぎで薬を出す?

「どうせ金もうけのために言ってるんでしょ!」

時々患者さんが、こんなふうに言って処方を嫌がる事がある。大抵こちらに敵意を持たれた時なのだが、「医者=儲けている」というイメージが先行し、金もうけのために薬を出しているという考えが出てくるのだろう。

この疑問を払拭するためには、そもそも病院がなにで儲けているのかを明らかにする必要がある。

先に結論から言うが、処方ではほとんど金は稼げない

 

 

精神病院は何で儲けているか

クリニックと入院施設のある病院で違いはあるが、基本的には「通院/入院精神療法」というものが大きな収入となる。精神療法とは話して治す手法であり、普通は診察をすればほぼ全例申請していると思われる(私自身が管理者ではないので、細かいところまで把握しているわけではないが)

通院精神療法は、初診ならば5400円再診ならば30分以下は3300円かかる。ここから保険が適応されて患者さんが払うのは3割、自立支援があれば1割の負担となるわけだ。

入院精神療法は週に一回4000円報酬を得ることが出来る。これに加えて入院の場合は、入院基本料というのが病棟に応じて一日7000円程度から13000円程度まで得ることが出来る。ほかにも大小さまざまな診療報酬があるものの、メインの稼ぎは精神療法と入院基本料となる。

 

 

診察しないと薬が出ないのは、精神療法をとるため?

精神療法で稼いでいるとなると、当然病院は精神療法を行いたい。処方が診察なしで出来ないのはそのためだろうか? 

そうではない。無診療での投薬は医師法20条医師は、自ら診察しないで治療をし、若しくは診断書若しくは処方せんを交付してはならない」と規定されているから出来ないのだ。本当はこっちだって出したい気持ちでいっぱいだ。薬が抜けて調子が悪くなって困るのは本人や家族だけではない。医者だって困るのだ。それでも法律で決まっているから、出来ないのだ。断じて金稼ぎのためではない

 

 

処方することで病院はいくら儲かるか

最近の薬は非常に高価なものが多い。たとえば最近発売されたレキサルティという薬は、2㎎錠が一粒510円もする。この薬は毎日ひとつ飲むものなで、一ヵ月で15300円もこれだけでかかってしまう(薬も保険が適応されるので、患者負担は三割または一割)

ほらみろ荒稼ぎしてるじゃないか、と思われがちなのだが、実はそうではない。たしかに月に15300円のお金がたった1錠/日だけで動くのだが、そのほとんどは我々病院には入らない。

我々に入るのは、どんなに高価な薬を出そうと、処方箋料680円だ。安い薬だろうと、高い薬だろうと関係ない。量が少なかろうと関係ない。量が多いと関係がある。7種類を超えると病院の取り分は400円にまで減ってしまう抗不安薬睡眠薬が多ければ、280円にまで減ってしまう。薬の量が多いと、むしろ病院は損をしていく。覚えておいてほしい。

じゃあどこが儲かっているのかというと、製薬会社にすべてのお金が入る。

製薬会社がふんだくっているのか!と早合点してはいけない。確かに多くのお金が入るのだが、近年は薬を一つ作るのに莫大なお金がかかっている。昔よりも薬自体が複雑になっていることもあるが、なによりも治験で要求される安全レベルが非常に高くなってきているのだ。安全レベルを上げるため、治験にかかるお金が莫大なものになってきている。開発でかかったコストをペイするために、やむを得ず薬自体の値段も上がっているわけだ。

 

 

まとめ

処方料は680円。精神療法は3300円。

薬なんて飲みたくないあなたを5分かけて説得するぐらいならば、さっさと次の人を見たほうが5倍儲かる計算になる。金稼ぎで薬を出すことはまずないと、断言していいだろう。

 

余談だが、儲けのために検査をたくさん出す悪い病院は、ある。精神科はせいぜい血液検査ぐらいしかないので大した稼ぎにならないが、耳鼻科や眼科などの検査機器がたくさんある病院は要注意だ。本当に必要な検査なのかなぁ?と思うことが、時々ある。(もちろんちゃんとしている病院が大半ではある)