包み隠さず精神科

現役精神科医が精神医療の内情を、包み隠さず話します

精神科の診察室で何を話せばいいのか

「調子はどうですか?」こんな一言から診察が始まって

「変わりないです」こう答える。そうしたら

「じゃあいつもの薬を出しておきますね」と返ってくる。

なんとなくこれではいけない気もするんだけど、他に切り出す話題もなくて、そのまま診察室を後にする。

 

こんな事になりがちだったりしないだろうか。

診察室で何を話すのが正解なのだろうか。ほかの人は何を話しているのだろうか。その疑問に答えようと思う。

 

初診では誰がどう困っているのかを話す

まずは初診の話をしよう。病院へ来たからには何か困っていることがあるはずだ。通りがかりにふらっと立ち寄るような場所ではないのだから。

ただし、困っているのが本人とは限らないのが精神科の面白いところだ。本人でも、家族でも、近所の人でも、だれでもいい。可能な限り困っている人が一緒に受診しよう。そして何に困っているかを伝えよう。おのずと話が進んでいくだろう。

 

「変わりないです」を医者はこう捉える

さて、ここからは再診の話だ。

とても多い返事に「変わりないです」がある。その返答が嫌かと聞かれれば、医者からすれば全く嫌ではない。むしろ楽で助かるぐらいだ。しかしあなたの事を考えるならば、「変わりないです」を適当に言うのはおススメしない

我々医者からすれば、「変わりない」は「話すほどのことは無い」ととらえる。なるほど、特に困っていることは無いんだなぁと感じるのだ。「元気いっぱいです」とまでは言わないが、「まずまず問題なくやっています」ぐらいのニュアンスで伝わっている

もちろんそれで良いならば変わりないと言ってくれればよいのだが、きっと本当は何か困っていることがあるはずだ。それは前回の受診の時に言った話かもしれないし、いちいち人に言うほどでもない程度の困り感なのかもしれない。だけど困っていることは是非伝えるようにしよう

 

 困っていることを話す

精神科医をしています」と言うと「えー、なんか心の中を見透かされそう!」なんて言われることがあるのだけど、実は全く見透かせれない。そういうメンタリスト的なことが出来るわけではないのだ。精神科医なんて偉そうなことを言っているが、病気の知識があって、ほんの少し話を聞く練習をしていてるだけだ。口に出して言ってくれないと、あなたが何に困っているのか全く分からない

繰り返しの内容になるが、困っているのが前回言った内容でも構わない。「困っていることが変わらず続いている」という話を、是非診察室でしよう。

 

どうなっていきたいのかを話す

さて、困っていることを伝えたとき、思ったより医者が食いついてこず、そのまま話が進んでしまうことがある。これは医者によって違いのある難しい部分の話だ。大げさな例だが、「胸がドキドキするんです」このセリフは心臓を見る循環器内科の医者からすればとても気になるワードだが、精神科からするとそんなに気になる内容ではない。精神科医からすれば数ある症状のうちの一つであり、そこを詳しく聴くことに意味を感じない。これは科の垣根を超えたオーバーな話ではあるが、話を聞く医者によってあなたの訴えに興味を示す人と示さない人がいるのは、同じ精神科でもありうる。

困っていることを口にするだけでなく、「ドキドキが楽になる方法はないですか」なんて、どうなっていきたいのかを添えてもらえると、こちらも重要度が伝わってくる。なんとなくの報告なのか、それとも切実に困っているのかを、しっかり口に出すのがおススメだ。

 

前の診察から今日までの出来事を話す

そんなに困る事が思い浮かばないときは、前回受診から今までの出来事を振り返ってみよう。前回から今まで、特に何事もなく平坦に過ごせていたならばそう言ってくれたらいいし、そういえば〇〇が困ったな、とか、こんな変化がありました、とか、些細な内容を伝えてくれて構わない。どこに治療のヒントが落ちているのか分からないし、楽しく日々を過ごせているのなら、薬を減らす話を出来たりするかもしれない。

あなたがどう過ごしているのかを、教えてほしい

 

家族に一緒に入ってもらう

前回から今までの話もそんなにすることが無いし、そもそも人と話をするのが苦手だし。この医者話しづらいから困った・・・。こんなときは、家族も一緒に入ってもらうと良いかもしれない。自分は困っていなくても、家族から見ると違和感がある事もあるだろう。一人の病気にみんなで立ち向かうのが、あるべき姿だ。

 

長らく通っていて、薬が貰えればもうそれで良い時

こんなときは迷わずこう言おう。「変わりありません」と。

 

話が長い人は何を話しているのか

時々、やけに診察が長い人がいると思う。人それぞれだが、たとえば昔の話を振り返っていたりする。幼少期から中学校、一つ前の仕事の時など様々だ。ただ振り返りながらケアをしていると、時間がかかる事が多い。

他にも、本当に不調で泣きながら話をしていたり、入院の提案をしたりするときにも時間が長くなりがちだ。

いずれにせよ時間がかかるときは調子が悪い人であることが多いので、あまり責めないでもらえると助かる。救急外来でいうと血をダラダラ垂らしながら受診している人みたいなものだ。どうしてもケアに時間がかかってしまう事がある。あなたも血が止まらないときは時間を長くとる事もあるだろうし、他の人だってそうなのだ。